2021年6月30日水曜日

ビオトープ論 ゲストスピーカー

 昨年は新型コロナで開催できなかったが,今年はビオトープネットワーク中部代表の長谷川さんに来ていただけました.


いつもパワフルな講義を聞かせて頂いておりますが,今年も面白いお話がいろいろと聞けました.

なかでも私が個人的に最も印象深かったのは,保全事業の目指すところについてのお話でした.

残念ながら,日本において(世界的にもそうなのですが・・)何かを保全する動きは,開発を伴うものがほとんどです.何かを作る,何かを変える際に環境配慮をするということは法律でも決められています.

保全方法を検討するに際して,開発対象地で事前モニタリングを行い,生息生物リストや環境情報を整理するわけですが,それらが開発後にも保たれること,つまり保全目標となるわけです.

長谷川さんが伝えてくれたのは,事前モニタリングの段階で明らかになるのはすでに劣化した生態系であるということ.なぜ50年,60年あるいはそれ以前の在りし日の豊かな姿を目標に掲げないのか,ということである.

そうですよね.目標が低すぎますよね.せっかく保全事業進めるのだから,来た時よりも美しく精神で臨んでいきたいですね.

他にも面白いお話がたくさん聞けました.ありがとうございました.


2021年6月27日日曜日

田植え

 6/26日.やっと田植えが終わった.

本当は先週やりたかったのだが,苗の生育が不調で月末になってしまった.


①6/6 田起こし

1反5瀬(15アール,1500m^2)の田んぼを借りている.田植え機と稲刈り機はヤフオクで格安の中古を購入したが,トラクターは汎用性が高いため,中古でも3,40万円する.なので消防団の同僚にお借りしました.ありがとう.


②6/9-11 取水

未作付け期間が長かったので,減水深が大きくなっており(55mm!),なかなか湛水まで至りませんでした.3日かかって全面にいきわたりました.取水口を開けると水路からたくさんのアカハライモリが流入してきました.頑張って拾い集めて水路に戻しておきました.


③6/12 代かき

水漏れを少しでも改善したかったので,代かきは縦横2回行いました.ドライブハローがなかったので,田起こしで使っていたロータリーでやりました.やる前はうまくできるかどうか不安でしたが,結構きれいに掻けました.多くのダルマ,トノ,ヌマ,アマらカエルさんたち,無数のオケラ・・・なかなか逃げてくれなくて心が痛みました.



④6/26 田植え

ヤフオクで買った1300円の2条植え歩行式田植え機.疎植にしたかったのですが,調整機能がなかったので密植に.なかなか思うようにいきませんなあ~.クランクと移植アーム軸のギア比変えればできるはず.来年に向けて歯車探してみよう.

1日かかりましたが,何とか無事終わりました.それにしてもすごい数のオタマジャクシでした.ヌマガエルが多かったような気がします.

お手伝いしてくれたOGのHさんとYさん,ありがとうございました.





育苗

 今年は苗づくりに挑戦した.

JAで苗を買ったら,ひと箱800円弱.1反で25箱使うとして2万円.

米の売価が90000円としても,苗代だけで20%以上.それ以外にも作業機械の減価償却に農薬,肥料.そりゃ作っても補助金無けりゃ赤字になるね.

かなり前から米価は変わってませんが,コストが増加しているので赤字がかさむようになっている.というわけで,我が家の田んぼはローコストを徹底します.

自分で育苗した理由はほかにもあります.品種です.知り合いから今となっては珍しい旧ハツの種もみをいただきました.10年ほど前に耐病性品種のハツシモSLに全面切り替えになっているのですが,食べてうまいのは断然旧ハツシモ.楽しみです.

私は自家消費で販売する気はないので関係ないのですが,農協で苗を購入しないと,様々な条件(難癖に近い?)により特別栽培米に認定されません.例えば種子消毒で温水消毒という薬を使わない方法がありますが,それをすると特栽米扱いにならない(農協によって違うと思います)という地域もあります.

まあ,いろいろ書いてますが,一度やってみたかったというのが本音です.


で,感想はというと・・・むつかしい!の一言.結論から言うとあまりうまくできませんでした.『苗半作』という言葉が重くのしかかります・・・


では育苗記録を.

①5/16 塩水選

 比重1.13の塩水で,浮いてきた粃を取り除きます.20Lで塩5kg.かなりしょっぱいです.取り除いた粃はニワトリさんの餌となりました.喜んで食べてくれました.1反5瀬の田んぼ用に選別籾を4kg準備しました.


②5/16 温水消毒

 60℃のお湯に10分つけて消毒します.薬品いらずで安全&安上がり.


③5/16-21 浸水

 消毒の終わった種籾を,冷水に積算100℃になるまでつけて,水を吸わせる.いわゆるハト胸状に膨らむまでおいておく.我が家は16℃の井戸水なのでそのまま漬け置き.その間,水槽用のポンプで酸素供給.


④5/22 催芽

30℃の温水に15~20時間つけて,1mmほど芽出しする.

ここでも水槽用のヒーターが活躍.思った以上にはやく幼芽が出たので,8時間で終了した.しかしこの焦った判断が,のちに大きく影響した.反省.


⑤5/23 苗箱に播種,覆土

催芽した種籾を苗箱に播種した.本来は遠心分離機などで脱水し,ベルトコンベヤに乗せて播種機に入れるのだが,もちろんそんなものはない.なので濡れたまま手で播いた.まあ,当然のことですが,籾同士がくっついてうまく播けなかった.これで生じたムラのせいで,田植え時に欠株が多く発生してしまった.反省.

中苗で植えたかったので,播種量は120g/箱にしました.ちなみに幼苗なら200g以上播種します.



⑥5/23-27 出芽

30℃に維持し,1-2日で1cm程度まで芽出しするのですが,特に夜間気温が低く,5日間かかっても出芽がそろいませんでした.自作苗箱ラックをマルチで覆ってみましたが,上下での温度差もあって,今回の苗づくり一番の問題点となってしまいました.反省.



⑦5/28-6/1 緑化

苗を屋外に出し,気温変化に少しづつさらす段階です.寒冷紗である程度遮光します.通常,2,3日で終わるのですが,出芽がうまくそろわなかったので5日間要しました.


⑧6/2-6/25 硬化

外でほったらかし.田植えできるまでのサイズまで育てます.でも催芽から出芽までの失敗故か,なかなか大きくなりませんでした.結局,中苗まで育たなかったのですが,見切り発車で田植えしました.写真のように畑で硬化を行いました.計33箱ですが,これは田んぼにほとんど運び終わった残りです.











いや~,育苗室みたいな温度管理のできる施設がないとむつかしい.でも昔の人はみんな工夫してやってたんですよね.

来年こそ立派な苗を作りたいです.



























2021年6月22日火曜日

水棲生物識別実習 低平地の水棲生物

 今日は楽しい楽しい水棲生物識別実習.

コロナと増水の影響で,今年も藤前干潟と武儀川が中止になってしまった.

なので今年度初です.


3年生33名と一緒に,大学横の村山川でガザガザしました.








魚類は・・・計20種

コイ,フナ類,オイカワ,ヌマムツ,カマツカ,ツチフキ,ゼゼラ,モツゴ,タモロコ

コウライモロコ,デメモロコ,ヤリタナゴ,タイリクバラタナゴ,ドジョウ,カラドジョウ

トウカイコガタスジシマドジョウ,カダヤシ,カワヨシノボリ,ナマズ,オオクチバス


カエル類・・・4種

トノサマガエル,ナゴヤダルマガエル,ニホンアマガエル,ヌマガエル


エビ・カニ類・・・4種

モクズガニ,アメリカザリガニ,スジエビ,カワリヌマエビ属の1種


水生昆虫・・・いろいろ

コオイムシ,アメンボ,オオアメンボ,コセアカアメンボ,ハネナシアメンボ

コヤマトンボ,クロイトトンボ,サナエトンボ科の1種・・・・ヤゴ勉強しなきゃ.


ここ2年,ミナミメダカがほとんど見られない.カダヤシばかり・・

あとカラドジョウを村山川で初確認しました.


周辺の水田もインターチェンジ工事に伴って埋め立てられています.

今後の変化が気になります.


天候にも恵まれて,久しぶりにフィールドで実習ができました.

TAの皆さん,お疲れさまでした.

2021年6月21日月曜日

カダヤシとメダカのパワーバランスについて

 梅雨の晴れ間.輪之内町に行ってきた.

7年ほど前にカダヤシの侵入を確認したが,その後あっという間に拡散し,ミナミメダカは減ってきた.

どのような場所でカダヤシが優占するのか?依然としてメダカが優占している場所もあるが,そのような場所はどういう環境なのか?

カダヤシとメダカの好適環境を明らかにし,カダヤシ対策とメダカの保全につなげようという研究です.(修士のO君が頑張っています)


ハツシモの田植えもピークを迎え,水路の水位は高く,濁りも強烈.

こんな時は魚は採れない.採捕効率が悪いのか?どこかに退避しているのか?



田んぼにはアラレのような丸い粒々.



これが最近報道で知られることとなった緩効性肥料のカプセルです.

少しずつ肥料分が溶けだすので,元肥のみで追肥しなくていい一発系肥料です.

知らない人が見たら魚の卵にしか見えませんね.


先日藤前干潟に行きましたが,田んぼの無い海でもすごい量のこれが見つかりました.

マイクロプラスチック問題が叫ばれてますが,これは半端ない負荷だと感じます.

でも本当に便利なんですよね.我が家の水田には使ってませんが,集約化を進めている農家が使用する気持ちはよくわかります.単に使うなというだけでは解決しないので,早期に分解する代替品(今の商品も分解するとは言ってますが,実際には何年かかることやら・・・)が必要なのではないでしょうか.

カプセルという同じ仕組みですが,苗箱に種もみをまく際に一緒にまくものがあり,それなら使用量が20分の一以下になるのですが,使用量が少ないと売れないわけで・・・農協は嫌がるんですね.闇です.


話を調査に戻します.今日,面白いものを見つけました.

左からスクミリンゴガイ,マルタニシ,ヒメタニシです.



ヒメタニシの殻頂が削れて緑色を呈するのはよく目にしますが,マルタニシは赤色なんですね.このような個体がたくさんいました.写真では見ずらいですが・・・初めて見ました.


近くの調査圃場では早くも中干しが始まりました.

我が家の田んぼはまだ田植えもしていないのに・・・苗よ,はやく大きくなってくれ!!


































2021年6月19日土曜日

アマゴとイワナの交雑

岐阜県で渓流魚の代表種といえばアマゴ(ヤマメ)とイワナ.

イワナのほうがやや上流域ではあるが,同所的に生息してます.

繁殖はアマゴのほうが1か月近く早く,時間的な生殖隔離が存在しています.


ところが・・・・

気候変動によって残暑厳しく秋になっても気温が下がらない傾向が強くなっている昨今,アマゴとイワナの繁殖時期が重複し,交雑種が増えているのではないか??? という仮説を立て,調査をしています. 

川でショッカー使ってアマゴ,イワナそれに交雑種の生息分布を調べています.



これはヤマトイワナかな? 放流されたニッコウイワナによる遺伝子かく乱が進んでいます.








こちらはアマゴです.



これが交雑疑い個体です.サバのような模様です.確定のため,後日遺伝子調べます.









交雑が生じる要因は何なのか?

水温,標高,堰堤・・・・岐阜県水産研究所にご協力いただきながら修士のT君が要因分析を進めています.









2021年6月11日金曜日

水田魚道と『江』を組み合わせてみる

全国各地でブームのようになっている水田魚道.

水田環境に着目する,あるいは環境学習のツールとしては良いものだと思う.


しかし,水田に遡上,産卵し,そこで生まれた仔稚魚たちの多くは中干しで死んでしまう.

まさにデストラップになりかねない.


当然,非灌漑期には田面には水がなくなるため,水田内は周年水中生活をする生物の生息空間にはなりえない.


過去に谷汲ビオトープで周年湛水水田に魚道を設置したが,その時はイシガイ類が大量発生して定着してくれた.


やはり魚道を登った先には安定した水域があってほしいものです.


そこで水田内に『江』と呼ばれる掘り込みを設け,魚道と接続することにした.

50m×2m,深さ20~50cmの溝を掘り,ビニールシートを張って周年湛水域を作った.








初期かん水後.排水路には魚道が見える.










取水翌日,はやくもナマズが遡上して産卵していた.


排水路を挟んで対面の水田は魚道のみ.

おなじミルキークイーンの栽培圃場だが,『江』のあるなしで生物相はどのように変化するのだろうか.岐阜農林高校といっしょに,この冬を経て来年の夏まで継続して調査をしていく予定です.

2021年6月10日木曜日

研究活動その他について BLOG復活します

以前,こまめに更新していた研究室のBLOGですが・・・

2016年以降,ほったらかしにしておりました.

(以前のBLOGは https://www1.gifu-u.ac.jp/~joroken/kiweb/sub5.html)


5年前になるというのに,興味を持ってメールを頂けることも多々ありました.

やっぱり広報しなきゃならんですね.わたくし,広報推進室委員だし.


ということで,BLOG復活させます.

新型コロナ禍のため,学外活動は限られますが,ボチボチ更新していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします.

新年度,あけましておめでとうございます

一年近くご無沙汰してしまいました. この間,自ら運転していたトラクターに轢かれ,体調不良でぶっ倒れ,長期入院し・・・・ 厄年でもないのに散々な一年となってしまいました. 新たな年度を迎え,ようやく復帰しましたので,今後ともよろしくお願いいたします. 退院の足で気になっていた田んぼ...