2022年1月9日日曜日

新潟紀行

 年明け早々,新潟に行ってきました.

以前から予定していたのですが,コロナもあってなかなか行けていませんでした.

目的は2つ.田んぼダムと日本農業遺産に関する調査です.


大雨の際,田んぼでダムのように貯水して下流への流出を遅らせるのが田んぼダム.具体的には降雨の前に水を落としてバッファを作ったり,落水工の角落しの板に穴や切れ込みを入れてゆっくり排水させる方法などがあります.田んぼの持つ多面的機能のひとつとして,そのような取り組みを行えば1反(10a)あたり400円の補助金がもらえます.岐阜県でもその取り組みを広げようとしていますが,未だに手を挙げている場所はゼロです.一方で,新潟県は先進地域とされ,全国の実施面積の半分以上を占めています.

ではなぜ新潟県では広がっているのか?それについていろいろとインタビューを行ってきました.まずは新潟県,新潟市といった行政,新潟大学の吉川先生らの尽力もあるのですが,実施している地区は過去に何度も水害を経験した場所でした.その苦い経験から,積極的な治水にかかわっています.そこで過去の水害対策として有名な大河津分水を見てきました.

















日本最長の河川である信濃川.その本流から放水路を設けて分水した場所で,資料館も設置されています.この少し下流部分に横田切れで有名な堤防決壊場所があります.そこは信濃川の狭小屈曲部でボトルネックになる場所です.

田んぼダムの取り組みを行っている場所は,なぜか横田の下流部です.もちろん,下流部で流出を遅らせることも洪水対策にはなりますが,横田よりも上流で対策を打ったほうがいいことは明らかです.始めやすいところからやっていくのもありですが,本来の目的や効率を考えると上流域への展開が必要ですね.補助金配りの口実で終わらないようにしなくてはいけません.



続いて日本農業遺産第一号の中越・雪の恵みを生かした稲作・養鯉システムの調査です.雪資源を生かすということでこの時期に行ってきた次第であります.小千谷,山古志地区に行くのは,中越沖地震の際に研究室のみんなでボランティアに行っていた2007年以来15年ぶりでした.



険しい山間部では棚田が広がっています.村外へのアクセスが悪かったため,ため池で食用の鯉を飼っていました.春になって田んぼに水が張られると,池から親鯉を田んぼに移し,そこで繁殖させます.稲作が終わるころにはため池に戻しますが,その際,冬に食べる分は各家の生簀で畜養されていました.田んぼを含め,ため池や生簀の水は,斜面に掘った横井戸から得ています.枯れない横井戸は,豪雪地帯のなせる業です.こうして長年鯉とともに暮らしてきた中で,突然変異で色鯉が現れ,品種改良していったのが錦鯉です.ここはその発祥の地であります.

日本農業遺産には第一回(H29)の認定となり,それなりに注目を浴びましたが,現在では日本農業遺産も各地で認定されていることもあり,注目度はかなり低い状況です.役場の方も,行政はそれで一時的に盛り上がったが経済的効果はほとんどないとおっしゃっていました.岐阜県でも長良川システムが世界農業遺産に指定されて行政は盛り上がっていますが,正直住民は?な状況です.実際に他の世界・日本農業遺産の指定地域を知っている人はどれくらいいるのでしょうか.残念ながらうちわでの盛り上がりなのかもしれません.白川郷の合掌集落のようにモノとして存在していればともかく,システムというのは一見してわからないものなのでPRがむつかしいです.中越の場合も,地元住民の方も経済的にはあまり期待していないということでしたが,このシステムを守っていくモチベーションにはなっているとのことでした.でもこれが一番大切なことなんですね.話を伺っていてホッとしました.

地域振興って何だろうということは地域資源学という講義の中で常に考えているところではありますが,地元が何かに向かって動いている状況があるのならば,その存在価値はあると思います.

やはり新潟は豪雪地帯でした.また日本酒王国でもありました.


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