2021年7月24日土曜日

ため池調査

 可児市周辺で,ため池10か所を回ってきた.



ため池は全国に20万か所近くあるといわれているが,その多くは江戸時代に作られたもの.

そのため,堤体の老朽化が激しく,災害の誘発が懸念されている.


ため池の改修を行うにあたり,農業用水源として利用されていないものなどは廃止(堤体撤去)するという選択肢も存在する.しかし,ため池には水源機能だけでなく,多くの生物の生息場所やレクリエーションの場といった多面的機能があるとされており,それらを総合的に勘案して改修・廃止を決める必要がある.


また,改修する場合においても,1年以上(多くは2,3年)の間,水を抜いてしまうため,ため池をよりどころとする生物への多大なる影響は避けられない.


そこで水を抜いたため池の敷地内で,堤体から遠く工事の邪魔にならない場所(沢の流入口当たり)に穴を掘って退避水域を造成し,ため池生態系を保全することを行っている(揖斐川町の谷汲池,須郷池など).



谷汲池における試みでは,元のため池にいたモリアオガエル,ツチガエル,アズマヒキガエル,アカハライモリ,サワガニなどの生物は,抜水期間中もこの退避水域に集まって繁殖していた(オオタニシのみ人為的に移動).種数でみると,堤体工事前に確認されたすべての種が保全できたのだが,退避水域の面積は元のため池と比較して狭いため,一時的に各種の個体数は大きく減少したと考えられる.その後個体数が回復したとしても,遺伝子の多様性においてボトルネックとなった可能性はある.


そこで注目したのが,アカハライモリの遺伝的多様性である.


岐阜県下,数百カ所のため池改修記録をもとに,各ため池の立地条件(近くに別のため池があるかなど),抜水期間,改修後の経過年数などを説明変数とし,アカハライモリの遺伝的多様性を目的変数としたモデルを構築し,どのような場合に遺伝的多様性が損なわれるのかを明らかにしようとしている.それが把握できれば,改修時の配慮方法を策定する際に有用な情報になるのではないかと.


というわけで中濃地方のため池10か所をめぐってきたのだが,アカハラさんがいたのは2か所だけであった.丘陵地帯が多く,アカハラの好む山林に乏しいためなのだろうか?思ったよりも少ない結果となった.次回,東濃地方に期待するとしよう.


それにしてもウシガエル.どこに行ってもオタマまみれでした.えらいことです.

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